主人公は今までの出来事をどうにか胸の中に押し込めようとする。
今目の前に起きたことを正直に話したところで、医者に戻る道が開かれないことは百も承知だからだ。その幻覚を伴う病気について治療をしていたのに、悪化したとなれば免許は剥奪されたままになるだろう。
狂気とも思える感情の中、彼は病室に足を踏み入れる。

精神的に問題のある女性と、妊娠中の女性の二人がいた病室はどう見ても穏やかなものではない。
この部屋にも窓のところに女性がスッと現れる。

主人公はかつて妊娠していた女性を担当していたことがあるようだ。
だが、彼女は容体が急変し主人公が駆けつけた頃には最悪の事態になっていた。彼は、自分自身に落ち度があれば自分を責めることができると思ったが、彼の処置は何も過ちなどなかった。何が悪かったのかもわからない。この部屋はそんな彼にとって特別に感じる場所でもある。

そしてまた幻覚の世界。

妊娠をした二人の女性。
片方はお腹の中で大きな病を抱え、もう一人は死が確定していた。病の赤子を救うには………その病を移す必要がある。そのために死ぬことがわかっていた赤子に処置が施された。二人の女性には黙ったまま、である。この病院は本当にロクでもないところである。
当然ながら死産であったことを知った母親は精神的にひどくショックを受けた。誰も彼女を支えることができず、ベッドから動こうともしない。赤子を模した人形を与えると、彼女はその赤子に話しかけるようになった。そんな「ごっこ遊び」を不気味に思うくらいならもっときちんとしたケアをすべきだと思うのだが。

「治療には誰にも傷つくことのない代償が必要だ」
だが、それは不可能だと主人公は知っている。