始祖ウィルスの続き。
プラーガの開発に行き詰まり原点に戻ったウェスカーだが、彼の手元にはt-ウィルス、G-ウィルス、t-Veronicaがある。これらを全て混ぜたらどうなるのか?
強いウィルスが開発できるのではないか?と思うのは自然なことだろう。
かくしてウロボロス・ウィルスは開発された。
(と思っている)
研究設備は古いもののアンブレラが建てたものがあるし、トライセル社と手を組めば人員も確保できる。そして実験をするに当たって最も重要な”被験体”も比較的容易に手配できた。
ウェスカーの独断の元でまともな施設で開発や研究をすることができる施設、としてはかなりいい条件だったのではないか。
研究初期の段階で、リッカーに始祖ウィルスを投与したところ、嗅覚が若干鋭くなっただけでさして変化があったわけではなかったようだ。
その後、事故によりウロボロス・ウィルスが漏洩してしまう。その際施設内で突然変異した個体が発見された。ウロボロスに見られるのう胞症は確認できなかったが、研究において未確認個体は貴重である。
これをきっかけとしてウロボロス・ウィルスは更に進化していく。
……(前略)……ウィルスは、被験者の体内にある物質を元に黒い蛭状のウィルスのう胞を作り、体外に排出します。
ウィルスのう胞には、原始的な知能が確認されており、周囲の勇気物質を感知し、捕獲、捕食、増殖を行います。
個別のウィルスのう胞は、さして脅威ではありませんが、ウィルスのう胞の集合体は活動中の生命体さえ取り込むので、細心の注意が必要です。
「ウロボロス・ウィルス 使用上の注意」より
……はずだったのだが、ゲーム内で確認できるウロボロスは最初に現れるウロボロス、ウロボロス・ムコノ、ウロボロス・アヘリ、そしてウェスカーの4体である。様々なウィルスを元に作られているため、定着率が低く同調できる個体は(少なくとも作品上は)確認できない。ムコノはうまくいきそうだったが、やはり適性がなかったために怪物化してしまった。
アヘリは強制的に生み出した個体なので、計算して生み出したものではない。
(ギリギリまで研究し、最後の切り札的なポジションだったのかもしれない。アヘリはスワヒリ語で「終局」「極限」を意味する。まさにウロボロスの集大成)
研究を進めていたトライセルの研究員達も、ウロボロス計画の進行に伴い”処理”される。ミゲルという研究員はウロボロス・ウィルスの定着率の低さ、過度の変異、精神汚染をクリアする方法を思いついていた。しかしこれは採用されることがなかった。
焦り故か、判断をミスしたのかはわからない。
ウロボロス・ウィルスが及ぼすヒトDNAへの影響。
それは劣等な遺伝子しか持たない価値のなき者には致命的な一撃となる。
多くのものはその選別に耐えることはできず、地を這い自らを飲み込む無限の蛇と成り果てる。
残るのは価値のあるひと握りの者、真に優秀な遺伝子を持つ者のみとなるだろう。
この先の世界では、資格のない者に用はない。
明日昇る太陽の恵みは、選ばれし者のみが享受できる。
今夜、ウロボロス・ウィルスは、世界に解き放たれる。
かねてからの計画通り、爆撃機に搭載されたウロボロス・ミサイルは、対流圏界面に到達と同時に発射される。
ミサイルより飛散したウィルスは、対流圏上部に流れる偏西風にのり、世界中にその選別の根を下ろしていくこととなるだろう。
ウィルスに感情はない。
あらゆる人間を選別する。
そして選ばれなかった者は、そのままウロボロスの宿主として次の宿主を探す。
その連鎖を止めることは、誰にもできない。
60億の悲鳴が全ての歴史を塗り替えるだろう。
「ウロボロス計画実行書」より
この手の悪者に共通しているのが、滅ぼした後どうするのかというビジョン。
支配者になります、は答えになっていない。
いくら選ばれた者だからと言っても、ウロボロスの連鎖は止められないのである。生き残ったとしても、ものすごく面倒くさい世界になっていると思うのだが、超越した自分の力があればどうにでもなるというのだろうか。
まだスペンサー卿のほうが人間の形を保っているだけマシである。
ウィルスに感情はない、と記したウェスカーが、微妙くもその感情に突き動かされてウロボロスを生み出したのは皮肉としか言いようがない。
価値のある、優秀な遺伝子を持つ者のみが生き残る世界も、かつての同僚ウィリアムのように最初は同じラインに立っていたとしても、いずれ抜かされて置いていかれるかもしれない。支配者特権で全てを掌握できても、クリスのような異分子がいないとは言い切れない。
……まあ、そういうネガティブなものをすべて封じて「そのような可能性は万に一つもない」と封印してしまうのが悪の親玉のやりかたなのかもしれない。
ウロボロスの蛇が示すのは「死と再生」である。
”地を這い自らを飲み込む無限の蛇と成り果てる”と記しているが、ウロボロスの蛇は無限に自爆し続けるというイメージではない。世界を一度破壊し、再び選ばれし者によって再興するとしても、いつか”死”が訪れる。
なんだかとても皮肉なネーミングである。